第49回 麺や紅丸(あかまる) 店主 畠中孝氏
千葉県市原市の住宅街。飲食店もまばらな郊外で、連日、大行列を作っているのが「麺や紅丸」だ。ご主人の畠中氏はフレンチ出身でラーメン店での勤務経験はまったくない。それにもかかわらず、つけ麺専門店を大繁盛させている。2011年春からはヘルシーな“大豆麺”を使った商品も揃え、つけ麺の店ながら年配のお客や女性の“おひとりさま”にも大好評だ。

1967年、千葉県市原市生まれ。
ホテルのフレンチで調理を経験した後、2000年5月に「麺や紅丸」をオープン。開店して最初の3年間は閑古鳥が鳴いていたが、次第に口コミで評判が広がり、現在は古民家風の30坪の店舗で一日15回転する日もあるほど大人気に。現在、T'sキッチン代表取締役を務める。


“具だくさんのつけ麺”で差別化に成功!

一般的につけ麺のメニューは、麺が山盛りで、つけダレは少量というスタイルが多いです。ほとんどの店が麺の旨さで勝負しているからでしょう。でも私は麺だけではなく、タレや具材も魅力にしたかった。野菜がたっぷりで栄養のバランスがよく、健康にも良いつけ麺を提供したかった。だから当店のメニューはすべて具だくさんにしています。
一番人気の「炒め野菜つけ麺」750円は、山盛りの炒め野菜をつけダレに盛っています。麺と具材の両方を、香ばしいタレと一緒に味わってもらいます。一方、「牛すじ辛味 つけ麺」950円は、牛すじ、大根、人参、半熟煮玉子などが煮汁と一緒にゴロゴロ入ったスープに麺を入れています。麺も具材も辛味ダレにつけていただきます。こちらのメニューも初めて来られたお客様はそのボリューム感にとても驚かれます。
さらに約5年前に開発した「塩つけ麺」850円は女性に大人気。モヤシやニラ、チャーシュー、キャベツ、煮玉子をたっぷりと塩ダレに盛って、冷たい麺をセットにしています。塩ダレの一番上には大きな梅干しをのせているのが特徴で、梅干の酸味が利いて、さっぱりした味なのです。
今春からは健康に良い“大豆麺”も導入!

大豆というと、どうしても大豆独特の青臭さを心配してしまう人が多いかもしれません。「健康には良いかもしれないが、本当においしいのだろうか・・・?」と。しかし、私も驚いたのですが、大豆から出来ている“ビゴーレ粉”を使えば、豆臭さがほとんどなくて、むしろ香ばしい独特の大豆風味を楽しめるのです。
もともと当店では“毎日でも食べられる健康に良いつけ麺”をコンセプトにしてきたので、すぐに大豆麺の導入に踏み切りました。そしたらそれがすぐに評判になったのです。大豆は女性に喜ばれるイソフラボンの成分を豊富に含んでいます。しかも低脂肪でありながら良質なたんぱく質を含みます。さらに血糖値を上昇させない“糖質制限”の食材なので、血糖病の方でも安心して食べられるのです。もちろんダイエットにも効果があります。
つけ麺専門店というとサラリーマンなどの男性客がメインとう店が多いですが、当店ではお年寄りの方や女性の“おひとりさま”も多いです。“健康によいつけ麺”というこだわりが支持されているから、こういったお客様を掴んで行列ができるのだと思っています。中には糖尿病のお年寄りの方で、「4年ぶりにラーメンが食べられた!」と感激されたお客様もいらっしゃいました。あの笑顔は本当に嬉しかったですね。
糖尿病だった父親を失ってから…

独立してからもずっと“健康な食事”とか、”糖尿病患者でも食べられるつけ麺“を念頭においてきました。私の30代は”健康なつけ麺“のための試行錯誤の連続でした。
儲かるかどうかという経営的な観点だけではなく、“社会に必要なものであるから生み出したい”という純粋な気持ちから取り組んでいました。つけ麺やラーメンは塩分も多めで、毎日食べるものではないと思われていますが、そのイメージを払拭するようなメニューを生み出したかったのです。”糖質ゼロ“のトレンドはビールや清涼飲料に限ったことではありません。つけ麺やラーメンの店にも押し寄せているのだと感じています。

1年前からは専用トラックも走らせて、千葉マリンスタジアムや筑波サーキットで「網焼きチャーシュー丼」600円の販売もスタートしました。こちらも大好評で、一日600食を完売したこともあります。私は調理人としてフレンチからスタートしましたが、当時の調理技術は、その後の麺づくりやスープづくり、チャーチューの火の通し方など、至るところに生かされていると思います。人生に無駄な経験はないと、最近つくづく感じているところですね。
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